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活版印刷

活版印刷名刺に思うこと

活版印刷という印刷方法が近年注目をされて、クリエーターや若い方なども興味を持って頂ける状況なのは大変嬉しい限りです。
既にずいぶん前に現役を退いた印刷機械たち、鉄くずとしてスクラップにされる寸前に価値を見いだされた方々が手に入れてもう一度表舞台で活躍する機会を与えられて本当に嬉しい限りです。だからこそを現役時代の制約や使い方などを堅苦しく考えないで、新しい考えや使い方で自由に新しい活版印刷の表現ができるようになったと思います。

その一方で最近目に付くのが「活版印刷で差別化」といったような考えです。活版印刷が注目されるきっかけが強く圧を掛けることで文字の凹みを表現することができ、それが手触りや高級感を感じさせるといった事です。確かにエンボスされたかのような文字の凹みは特別な感じを受けます。
しかし、私はあまりそのような印刷は好みません。もちろん記載内容やデザインによって事情は異なりますが、何でも凹ませるというのは関心しません。

例えば一般的なビジネス名刺で特Aクッションを使用してガッツリ圧をかけて文字を凹ませる、そんな名刺を見ることもあります。また、両面印刷で両面から圧をかけて凹ませている物を見ることもあります。こんな名刺を見てどう思いますでしょうか。差別化されたこだわりの名刺でしょうか。私はそう思いません。

ビジネス名刺にはビジネスを円滑に進める目的を持った名刺と考えます。そのような名刺に特Aクッションのような厚みのある(0.8mm〜1mmはある)しかもコースターなどに使われるように比較的柔らかい紙です。名刺入れに何枚入るでしょうか。沢山入れて持ち運べば角があたり痛んでしまいます。またもらった相手はどう思うでしょうか。厚く柔らかい紙に社名、肩書き、氏名、住所、電話番号、FAX番号、ウェブサイト、メールアドレスなどがぎっしり入って強い圧力で凹ませた状態の名刺は見やすいでしょうか。

ビジネスの名刺は自己満足の押しつけではないはずです。活版印刷でビジネス名刺をお作りなるならもっと最適な紙や印圧があるはずです。また、両面から圧をかけたためにどちらにも文字が裏抜けしている名刺も同じです。裏の内容が表に浮き出ている、そんな名刺は活版印刷としてどうでしょうか。

現役を退いて自由に活用する活版印刷だからこそ、プライベート名刺やショップカードなどでは紙を選び色やレイアウト、印圧などで今までに無い表現ができ差別化になるでしょう。きっともらった人も喜んで良い出会いのアイテムになることは確実です。しかし、やはりビジネス名刺ではやりすぎない方が良いかと思います。

以前に某反社集団の名刺を拝見したことがあります。また廃業してしまいましたが活版印刷を教えてくれた印刷会社の社長が言っていたことが印象的で「あの連中の名刺が一番下品」ということでした。耳付きの和紙、透かし入り、エンボス付き、活版印刷、箔押しなど要するにやり過ぎの仕様だそうです。昔から活版印刷を長くやってきたから分かる、最後は基本に忠実でスミ一色、アイボリーの平滑な紙に印刷された物が一番上品と。ただ、現代の紙事情や流行に合わせてアップデートも必要です。特に紙は良い紙がたくさんありますのでその辺は自由に決める楽しさがあって良いと思います。一方インクの色ですが、こちらもカラフルな色を試したくなって実際やってみるのですが、最後はスミ一色に戻ります。最近は濃紺やブルーブラックのような僅かに色味を感じさせるインクもとても品良く見えます。

当店で活版印刷を発注頂く事もありますが、上記の事をきちんと説明し用途や目的を明確にした上で紙やインクの色を選んで頂いています。フカフカで厚みのある紙を選びそうになるお客様を説得する場合もございます。
自由に作れる、自分好みで作れるからこそその名刺の意味や渡す人、使われ方を想定して楽しんで活版印刷をするようにしていきたいです。

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